障害者に対する音場改善による効果の検討
〇森脇美佐1 ) 矢嶋瑞貴1 ) 石塚進2 )
1 )音楽療法士 2 )音響コーディネーター
2018年12月9日、京都大学で開催された「第12回日本音楽医療研究会学術集会での発表内容です。(※PDF版はこちら)
【目的】
生音から伝わるものは大切である。しかし、障害や高齢に伴う声量の減退や聴力の衰えは否めす、拡声システムの導入を試みた。その際、聴取者に最も近いインターフェイスであるスビーカーの検証・改善による、より正確で快適な音場空間創造を目指した。
【対象】
障害者支援施設入所者50代~80代の1 5名(女性1 0名男性5名)
【方法】
セッション:月1 ×5回各1時間 S. 1 ~S. 5
使用機材:マイク4本・施設常設ミキサーアンプ
Asp=再現性を重視し設計されて位相特性に優れているスピ-カー
Bsp=施設常設スピーカーメーカー純正適合品
歌唱や会話・楽器演奏の際、常に拡声システムを使用し、両スピーカーのスピーチ及び音楽の表現能力の比較と、それに伴う対象者の反応・挙動の変化を観察した。
S. 1・2・5 =Asp使用 S 3 =Asp・Bsp比較使用 S. 4=Bsp使用
【結果】
S 1・2歌唱意欲と共に、聴く意欲も向上。音楽的な要望が増えた。
S 3比較使用においてAsp使用時に以下の効果を得られた。
八ンドマイクのハウリングが軽減した。着座位置による音量差が軽減し、会場全体の一体感が増した。発声頻度音量共に上がり、また他者の歌唱・演奏を聞こうとする姿勢が見えた。発声困難者の小さな声や息づかいが聞き取られ、集中力の持続・参加意識の向上が見られた。
S. 4前回までの音の聞こえ方の違いに反応あり。ノイズや八ウリングの発生に対し、マイクのスイッチや持ち方を気にされる方もいらした。
S. 5自己の音楽的な表現力・想像力が豊かになり、全体のバランスを聴き取るようになった。
【考察】
聞き易く説得力のある音は、想像力や集中力を生み対象者の満足度を上げた。自分の声を届かせたい気持ちからか、マイクに近づけるため体勢を前傾させたり、顔を動かしたりすることは身体的リハビリにも繋がるのではと思われる。
再生装置の最終段階であるスピーカーによる音場改善からは比較的容易に効果が得られた。音楽療法士及び施設関係者が機材への見識と理解を持ち、最適な機材選定導入による環境整備を行えば、快適な音場空間創造はさほど困難ではないと思われる。今後は音楽性、利便性・安定性・操作性が優れた八一ドウェアの開発及び普及をメーカー・施設・関連団体に期待し、検証していきたい。
2018年12月9日 第12回日本音楽医療研究会学術集会 in KYOTOパネル発表